国連生物多様性の10年国際キックオフイベント報告
自然と共生する未来の実現のために今こそ行動を
お問合せ: 金子由佳 UNU-ISP undb_secretariat@unu.edu
国連大学は、生物多様性条約事務局、環境省、石川県、金沢市との協力のもと、国連生物多様性の10年キックオフ・イベントを2011年12月17日から19日にかけて石川県金沢市にて行いました。
本イベントは、国連機関、生物多様性条約締約国、また金沢市、石川県、日本国というあらゆるレベルの代表者の参加によって3日間にわたり行われ、記念式典だけでなく生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)に関するワークショップ、記念フォーラム及び視察エクスカーションも催されました。
記念式典にて
2011年から2020年を国連生物多様性の10年とするというアイデアは日本の発案であり、2010年の10月に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で承認され、第65回国連総会において「国連生物多様性の10年」として正式に宣言されました。これは2010年の生物多様性年の成果の上に立つものであり、2011年から2020年の生物多様性保全戦略計画における愛知ターゲットの第1目標、すなわち2020年までに世界中のすべての人々が生物多様性とその価値を認識することを狙いとするものです。
記念式典には600名以上が参加し、主催者をはじめとするさまざまな国際機関、政府関係者からのスピーチが行われました。赤阪清隆国連広報担当事務次長から代読されたメッセージにおいてパン・ギムン国連事務総長は、生物多様性条約の関連団体、締約国、国連システムの加盟国、民間セクター、市民団体、そして世界中の市民および消費者ひとりひとりに対して、国連生物多様性の10年への参画を呼びかけました。また結びとして、「自然との共生を目指してともに取組みをすすめましょう。私たちの現在の繁栄と望まれる未来のために、自然の恵みを保全し、賢く管理していきましょう」と述べました。
また現在の締約国会議(COP)議長である細野豪志環境大臣の代理で出席した横光克彦環境副大臣は、「愛知目標の達成に向けた取組みを着実に積み重ねていくことが今私たちに課せられた責務です。地球の豊かな自然の恵みを子どもたちに引き継いでいくために、自然と共生する社会の実現を目指して、私たち人類の叡智を結集し、ともに行動を開始し、世界中に広げていきましょう」と述べました。
コンラッド・オスターヴァルダー国連大学学長に代わって出席の武内和彦国連大学副学長は、これに賛同した上で、「今からでも生物多様性の更なる喪失を防ぐことは可能。ここに集まった各国の政府、国連機関、NGO、民間セクターの代表、そして一般の方々の存在こそが、この複雑な問題に対処するための解決策を見出すという、国際社会の決意を表している。このイベントでのメッセージが社会に広がり、それが具体的な行動につながることを願う。私たちには、ここでの議論を効果的な政策やイニシアチブにつなげる力があると確信している」と述べました。
石川県の谷本正憲知事は、「生物多様性が国際的な課題であると共に、それぞれ地域の人々の生活にも深く関わっており、そのため地方政府は地元の人々と理解と協力をもってこの課題に取り組むことが重要。私たちは、国連大学IAS石川・金沢ユニットの方々との協力の下、持続的な里山里海の利用、生物多様性の保全にたゆまぬ努力を続けてきた。このイベントを通じて、石川県の熱いメッセージが世界に発信されることを期待している」と述べました。
日本航空の大西賢社長は、「生物多様性の10年を通じて達成されるべき愛知目標は、すべてのステークホルダーの参加を必要とする。その実現に対し、企業は業種に応じてさまざまな方法で貢献が可能。私たちは航空会社として、侵略的な外来種の持込防止、人々の認識向上、「生息地の破壊」に関しては森林火災の監視、そして「脆弱な生態系の保護」については大気質の調査や地球温暖化防止によって貢献できる。」と述べました。
生物多様性条約事務局アフメド・ジョグラフ事務局長
さらに、生物多様性条約事務局のアフメド・ジョグラフ事務局長は、「次の10年は私たちの惑星にとって決定的に重要な10年となる。あらゆるレベル、すべての人々の行動によってのみ、自然と共生する未来を確保することができる」と述べ、「日本は、この国連生物多様性の10年の宣言の原動力として、持続可能な開発と地球上の生命を守るためのビジョンとリーダーシップを示している」と述べました。
また17日夕方に行われたウェルカムレセプションでは、「リオ+20と生物多様性実行委員会」による「石川宣言」が紹介されました。これは、愛知目標のコンセプトである「自然との共生」の促進、またリオ+20を契機として、国際社会が協力して愛知目標の達成に取り組むことを目指して提唱されました。
石川宣言では、2012年6月に予定されているリオ+20サミット参加者に向け、生物多様性の課題にサミットでの高い優先順位を与えること、及び愛知目標をサミットでの成果に完全に統合することが訴えられました。先月COP議長はリオ+20サミットの事務局長に対して、公式に「生物多様性戦略計画2010-2020」及びその「愛知目標」を提出しました。これはサミットの成果の一部としてそれらが盛り込まれることを狙いとして行われたもので、石川宣言はこの流れに続くものです。
イベント2日目の12月18日には、生物多様性国家戦略と行動計画(NBSAPs)に関する国際ワークショップが終日開催されました。このワークショップには、国連機関、各国政府、NBSAPの地域ワークショップ開催国、COP11議長国の代表、生物多様性条約事務局、締約国会議ビューローメンバー国、科学技術助言補助機関(SBSTTA)ビューローメンバー国、学界、NGO,民間事業者等から60名を超える専門家の参加がありました。ワークショップでは「生物多様性戦略2011-2020に沿ったNBSAPsの作成と改定」「NBSAPsを主流化するための効果的な手段」「生物多様性と里山イニシアティブに係る国際協力の強化」をテーマとした3つのセッションが行われ、それぞれのテーマに関するプレゼンテーションと議論が行われました。
イベント最終日の12月19日には、石川県内へのエクスカーションが行われ、日本における生物多様性保全の努力、持続可能な天然資源の利用、グリーン経済のモデル、そして里山、里海といった伝統的な自然と人々の生活の共生を図る日本の伝統的な方法の例について現地を視察しました。そこでは主に、佐渡とともに今年世界農業遺産に指定された能登の白米千枚田、絶滅の危機に瀕しているトキの人工繁殖を行う国内4箇所のうちの1つ石川動物園、ラムサール条約登録湿地であり水鳥の越冬地となっている鴨池などを訪れました。
3日間のイベントを通じて、「協力の必要性と各国における多様なNBSAPsの展開が行われているとの認識」「ローカルコミュニティーのニーズを考慮し、ローカルレベルの活動を促進するような開発政策と生物多様性の統合」「グリーンエコノミーへの理解の前進」「すべてのセクターからの約束を得ること」「切迫した問題に対する一般市民への認識の拡大」などが主要なテーマとして繰り返し述べられました。今後の10年間は、未来の地球の生物多様性が守られるかどうかを決定する重要なものとなります。我々ひとりひとりひとりすべてがこの問題に積極的に参加することによってのみ、生物多様性の保全が可能となります。国連大学は、今後も研究と教育を通じて生物多様性の保全に貢献していきます。





